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ホーム > お知らせ > 観測開始100周年記念講演会のご案内 > 講演要旨

100周年記念講演会 要旨

13:00〜

講演題目 生きている地球 ―地震と共に生きる―
講演者 吉川 澄夫 (地磁気観測所長)
講演要旨  柿岡の地磁気観測所は今年創立100周年を迎えました。世界中の地震や火山現象を説明する上で重要なプレートテクトニクス理論が生まれたのは1970年代ですが、その萌芽とも言える大陸移動説がドイツのウェーゲナーによって提唱されたのは奇しくも丁度100年前の1912年になります。かつて世界の大陸はパンゲアという1つの大陸であったのが次第に分裂した結果、現在のような大陸の配置になったというものです。この仮説は当初世界の学者から受け入れられませんでした。その原動力とそれを証明する根拠が不十分であった為です。しかし1950年代に古代の地磁気の極の移動経路が大陸ごとに違うことが分かったのをきっかけに大陸移動説が復活します。原動力となる海洋底の拡大を裏付ける証拠の1つとなったのが海底に残された地磁気の記録です。海洋底拡大説とは、海嶺と呼ばれる長さ数千kmに及ぶ海底山脈の下から溶岩が湧き出し、押し出された溶岩が海水に冷やされてプレートと呼ばれる岩板になって横に押し広げられていくというものです。地磁気の極が数十万年に1度の割合で反転することが知られていましたが、海底の磁気を調べた結果、海嶺を軸として対称に反転しており海嶺から遠ざかるほど年代が古いことが明らかになったのです。
 日本列島は北米・ユーラシアプレートという大陸プレートに載っています。プレートが衝突しているところは摩擦が働くため、すんなりと滑って沈み込んでいくことはありません。蓄えられたエネルギーが摩擦に打ち勝ったところで急激な滑りが起き地震が発生します。このような仕組みで昨年3月11日の東北地方太平洋沖地震は起こりました。大地震の発生時刻や場所を予測するのは難しいことです。たとえ予測できたとしても地震を止めることは不可能ですから可能な限りの備えをすることによって命を守るほかに術はありません。この講演では、プレート運動と地震発生の仕組みを紹介すると共に、地震と共に生きていくための備えについてお話をします。

13:40〜

講演題目 磁石は北を指す? ―地磁気と地球中心核のはなし―
講演者 清水 久芳(東京大学地震研究所准教授)
講演要旨  「磁石は北を向く」とよく言われますが、これは本当でしょうか?地磁気観測所のデータによると、柿岡で最近(2010年)は、地磁気は北から約 7.2 度西に、また、北側が約 49.8 度下を向いています。ということは、「磁石はおおよそ北を向く」というのが正しいことになります。それでは、地球のどこで測っても地磁気は同じなのでしょうか?また、地磁気はずっと同じで時間が経っても変化しないのでしょうか?「どこでも?」という問いには、世界の他の観測所で測られたデータから答えることができます。フランスで測られた地磁気によると、地磁気の方向は北から 0.5 度西に、北側が 63.7 度下を向いています(2010年)。また、「ずっと?」という問いに答えるために100年前に柿岡で測られた地磁気データを調べると、1913年には、北から5.2 度西、北側が49.5 度下となっています。これらから、地磁気は場所によって異なり、また、時間が経つと変化することがわかります。
 地磁気が場所によってどのように違うのか、どのように変化するのか、そもそも、地磁気がどのように作られているのかは、数百年にわたって人々に興味を抱かせる問題でした。17世紀のエリザベス1世の侍医だったギルバートを始め、多くの人は地球が大きい磁石になっているのだと考えました。しかし、ゆっくりと地磁気が変化する様子を説明するためには、地球は棒磁石のような永久磁石ではなく、地球深部の中心核が電磁石になっている必要があることがわかりました。
 この講演では、中心核で作られている地磁気がどのように振る舞ってきたのかを紹介します。また、地球中心核でどのように地磁気が作られているのかを、最近の研究成果を含めて紹介します。

14:20〜

講演題目 南極と北極のオーロラと地磁気
講演者 佐藤 夏雄(国立極地研究所名誉教授・特任教授)
講演要旨  極地の空に音もなく舞うオーロラは、この世で最も美しく、神秘的な自然現象であるとともに、太陽から地球への壮大なメッセージでもあります。その複雑な動き、明るさ、色彩には、地球環境のエネルギー収支の謎が秘められています。オーロラが毎晩のように見られる地域は、両極の磁極のまわりにドーナツ状にとりまいた領域に限られており、オーロラ帯と呼ばれています。南極の昭和基地は、オーロラ帯の真下に位置しており、オーロラ観測には絶好の場所であり、日本が南極観測を開始した当初から精力的に観測が行われて来ています。
 地磁気が場所によってどのように違うのか、どのように変化するのか、そもそも、地磁気がどのように作られているのかは、数百年にわたって人々に興味を抱かせる問題でした。17世紀のエリザベス1世の侍医だったギルバートを始め、多くの人は地球が大きい磁石になっているのだと考えました。しかし、ゆっくりと地磁気が変化する様子を説明するためには、地球は棒磁石のような永久磁石ではなく、地球深部の中心核が電磁石になっている必要があることがわかりました。
 この美しいオーロラが起きる条件である地球の大気と磁場は、地球上に住む生物を有害な宇宙線から守る二重のバリアーとして、重要な役割を演じてくれています。さらに最近の研究では、オーロラのエネルギーが膨大であることから、オーロラ活動と地球の気候変動との関係が指摘されており、オーロラは宇宙からのメッセージであるとともに地球環境問題にも密接に関連しているのです。
 私自身が研究しているテーマは、南極のオーロラと北極のオーロラはどう違うかということです。オーロラを起こす高エネルギーの電子は地球の磁力線に沿って(巻き付いて)南北両半球の間を往復運動する基本的物理特性を有します(図参照)。そのため、オーロラは地球の磁力線に沿って両極域に起きます。昭和基地の地磁気共役点(地球の磁力線で結ばれた南半球と北半球の地点)は幸運にもアイスランドに位置しています。この地磁気共役点でオーロラを同時観測することにより、オーロラの発生や伝搬の仕組みを観測的に診断することができます。
 この講演では、オーロラの形や色、発生する高さや地域などの概要、太陽と地磁気との関係を説明した後に、南半球と北半球でのオーロラの形状や動きの相違など最新の研究を紹介します。

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