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平成25年度地磁気観測所調査研究計画一覧


重要課題

(1)観測業務の遂行に関する調査研究の課題

ア.人工擾乱補正処理効率化のための開発研究(平成24年度〜25年度)

[担当者]:

○大和田毅、平原秀行、森永健司、西田誠、有田真、室松富二男、高橋冬樹(観測課)、藤井郁子(技術課)、徳本哲男、長町信吾(調査課)

[概要及び具体的な達成目標]:

  地磁気連続観測の生データには、磁力計近くでの工事や駐停車車両による人工擾乱が含まれている。当所では、これらの人工擾乱による異常値を、人工擾乱計測システムを活用し補正した毎分値を公表値としている。近年、観測所・観測施設周辺の開発などの影響により人工擾乱の発生頻度が益々高くなってきており、人工擾乱の検出と補正処理をより一層効率的に行うことが必要となっている。
 本研究課題では、これまでの補正処理の妥当性を客観的に評価した上で、地磁気連続観測データに含まれる人工擾乱の影響を的確に把握し、効率的に補正処理するための手法の開発を目的とする。


イ.地磁気現象検出の迅速化と地磁気現象に関する情報活用に関わる調査(平成24年度〜25年度)

[担当者]:

○大川隆志、笹岡雅宏、平原秀行、島村哲也、仰木淳平(観測課)、高橋幸祐(技術課)、長町信吾(調査課)

[概要及び具体的な達成目標]:

 GPS等の人工衛星を利用した機器の利用が生活に浸透しており、磁気嵐などの地磁気現象が日常生活にも影響を及ぼすことが懸念される。その影響に対する対応の一助に、地磁気現象に関する情報を速やかに提供していくことが有用であると考えられる。
  このため、地磁気現象の検出を迅速・効率的に行う手法を構築し、地磁気活動状況の把握および活用しやすい形での情報提供を目指す。


ウ.地磁気絶対観測の自動計測手法の調査(平成24年度〜26年度)

[担当者]:

○源泰拓、原昌弘(技術課)、大和田毅、大川隆志(観測課)、徳本哲男、長町信吾(調査課)

[概要及び具体的な達成目標]:

 地磁気絶対観測の自動化は平成23年度の調査研究で実施され、これまで困難とされていた偏角についても、ベクトルプロトン方式にて、絶対観測値の計測が可能であることが示された。一方、DI方式については、実用化までには至っていないが、海外で絶対観測自動観測装置の試作・試験が行われ、国内においても最近、測器の開発が始まっている。
 本研究課題では、DI方式について自動計測装置の開発に参画し、とくに試験観測の実施にあたるとともに、当所の業務への利用可能性の観点から観測方法、必要な観測精度を調査する。


(2)観測成果の公開に関する調査研究の課題

ア.地磁気ブロマイド記録によるデジタル毎分値に関する調査(平成25年度)

[担当者]:

○増子徳道(観測課)、源泰拓、山際龍太郎、海東恵美、高橋幸祐(技術課)、島村哲也、吉武由紀、仰木淳平(観測課)、石井美樹、澤田正弘、長町信吾(調査課)

[概要及び具体的な達成目標]:

 地磁気観測所の長期間の観測結果は高品質なアナログ記録(ブロマイド)として保存されているが、その大部分は手読みによる毎時値としてしか利用されてこなかった。世界的に1970年以前の地磁気デジタル値はほぼ存在しないため、過去のブロマイド記録をデジタル値へと変換させることで世界的に見て非常に貴重なデータが得られる。
 平成23年度までの調査から、過去のブロマイド記録を十分な精度で毎分値あるいはより高時間分解能なデジタル値へと変換させることが可能であることが分かった。平成24年度には科研費を獲得することができ、1964〜1975年の12年分のブロマイド記録をデジタル化し、毎分値としてWEB上で公開を開始した。
 平成25年度は、開発した手法を用いて過去データの数値化を進めると共に、数値化作業を業務ベースに移行するための準備を行う。


(3)観測成果の利用に関する調査研究の課題

ア.活動的火山における地殻活動と地磁気変化の対応関係に関する調査(平成23年度〜25年度)

[担当者]:

○藤井郁子、高橋幸祐、豊留修一、山際龍太郎(技術課)、福井敬一、増子徳道、有田真、島村哲也、西田誠(観測課)、長町信吾(調査課)

[概要及び具体的な達成目標]:

 これまでの調査において活動的な火山で地磁気全磁力観測を実施し、主に熱消磁・帯磁のモデリングにより地磁気変化と火山の熱活動との関連性を調査してきた。本研究計画においては引き続き地磁気と熱活動との関連性を調査する他、火山活動や地震活動などによる地殻活動と地磁気変化の対応関係についても重点的に調査する。特に近年、気象庁により全国の主要な活火山に傾斜計やGPSが整備され徐々に観測データが蓄積されつつあり、この傾斜計、GPSデータから推定される地殻変動と地磁気変化を対応させ、関連性を調査する。また各火山監視・情報センターとも連携し、火山監視・情報センターで得られている全磁力観測結果についても解析を試みる。


イ.東北地方太平洋沖地震に関連する地磁気変化(平成24年度〜25年度)

[担当者]:

○藤井郁子(技術課)、平原秀行、仰木淳平(観測課)、海東恵美、源泰拓(技術課)

[概要及び具体的な達成目標]:

 東北地方太平洋沖地震に関連して、昨年度の調査研究やUtada et al. (2011)によって、地磁気変化が報告されている。日本国内の主に全磁力連続観測点のデータを用いて、東北地方太平洋沖地震に関係する地磁気変化を精査し、振幅や空間分布について定量化を試み、変動源について考察する。次に、他の地震での同様な地磁気変化の有無を調査し、地震に関係した磁気シグナル監視の有用性について検討する。


ウ.伊豆半島東部における地磁気全磁力及び自然電位観測(平成21年度〜25年度)

[担当者]:

○笹岡雅宏、有田真(観測課)、豊留修一、舘畑秀衛(技術課)

[概要及び具体的な達成目標]:

 これまで伊豆半島東部で実施されてきた地磁気全磁力観測では、顕著な減少を示す長期的傾向があることが示されてきたが、地殻活動との関連は不明であった。しかし最近の研究から、観測データを補正することによって、地殻活動の変動に伴う全磁力データの変化を捉えられる可能性が指摘された。そこで本課題では、伊東市御石ヶ沢付近における地磁気全磁力観測(連続及び繰り返し)を継続するとともに、データ補正手法について調査研究を進め、全磁力観測データから地殻活動の変動に伴う変化成分を評価することにより、伊豆半島東部の地震活動、地殻変動等と地磁気全磁力変化の関係を調査する。また、地下水の流動等と関係のある自然電位の観測を実施し、火山との関連を調査する。



基礎課題

ア.大気電場観測データを用いたグローバルサーキットの研究(平成24年度〜25年度)

[担当者]:

○源泰拓、海東恵美(技術課)、平原秀行(観測課)

[概要及び具体的な達成目標]:

 国立極地研究所共同研究"大気電場観測データを用いたグローバルサーキットの研究"の共同研究者として、以下の2点の研究を進める。
  @地磁気観測所においては1929年から電位傾度の観測が続けられている。現在はデータが地磁気観測所報告(年報)に収録されているほか、電位傾度が100V/m以下の、短周期変動がない日を主観的に抽出された静穏日を選んで1日の平均値を算出し、それを一月毎に平均したプロット図がwebに掲載されている。一方、降雨、雲など大気の状態が大気電場の観測値に大きな影響を及ぼすことはよく知られており(Minamoto and Kadokura, 2011)、グローバルサーキットの調査にあたっては気象要因、とくに雲の影響を排除する必要があるが、柿岡では20年以上、気象観測はなされていない。本研究では、構内で全天カメラによる雲画像を取得し、大気電場静穏時間帯の変動を客観的に調査する。
  A昭和基地において2006年から2008年に観測された大気電場データから静穏時間帯を抽出したところ、活発なオーロラ活動・地磁気擾乱に対応する大気電場の変動が一例、認められた。本課題ではその後2010年までの大気電場データを用いて、太陽活動に伴う電磁環境の変動が大気電場に与える影響をさらに調査する。


イ.火山性磁場抽出のためのロバストソフトウェアの開発(平成24年度〜25年度)

[担当者]:

○藤井郁子(技術課)

[概要及び具体的な達成目標]:

 火山における全磁力観測での解析及びその評価を行うために、全磁力観測値から非火山性変化を取り除き、局所的な長周期変動を精度良く取り出すソフトウェアを開発する。


ウ.南極昭和基地における地磁気データ再処理および観測環境の変化に関する調査(平成24年度〜25年度)

[担当者]:

○有田真(観測課)、高橋幸祐、井智史(技術課)

[概要及び具体的な達成目標]:

 2010〜2011年に昭和基地の地磁気変化計室周辺に設置された大型建築施設の影響評価は平成24年度に終え、その結果については国立極地研究所刊行物「南極資料」に投稿・受理された。また、2013年1月から約1カ月間、昭和基地フラックスゲート磁力計感部の傾斜・温度を測定した結果、感部の設置場所の傾斜が大きく変動することが明らかとなり、夏季の基線値の異常変化は人工ノイズではなく傾斜変動が原因である可能性が高いことがわかった。
  平成25年度は測定した傾斜・温度変化と測定期間に実施した絶対観測により得られている基線値の時間変化との比較・解析を実施し、現在の観測状況で基線値を変化観測に付加して変化量を絶対値化できるかどうか結論を出す。


エ.地磁気観測所要報及び技術報告のデータベース化(平成24年度〜25年度)

[担当者]:

○森永健司(観測課)、石井美樹、澤田正弘、長町信吾(調査課)

[概要及び具体的な達成目標]:

 地磁気観測所要報および地磁気観測所技術報告について電子ファイル化を行い、WEBブラウザから簡単に閲覧、検索できるよう、SQLデータベースおよびwebアプリケーションを作成する。


オ.日本における地磁気極端現象の可能性調査(平成25年度)

[担当者]:

○源泰拓、原昌弘(技術課)、仰木淳平(観測課)

[概要及び具体的な達成目標]:

 1989年3月13日の磁気嵐は、カナダのハイドロケベック社の変電所の変圧器に過剰な地磁気誘導電流(Geomagnetically Induced Current, GIC)を流し変圧器を破壊したため、カナダ南部では大規模な停電を引き起こした。さらに2003年にも同種の停電事故がスウェーデンで発生している。磁気嵐等による磁場擾乱が大きくなりGIC災害の怖れがある高緯度地域では、これらの停電災害への対応のため、GICの予測などの研究が進んでいる。一方、日本のような低緯度域では、磁気嵐の磁場変動も高緯度域の1/10以下程度の大きさしかないため(Pulkkinen et al., 2012)、GICによる停電の危険性は低いと考えられ、調査は進んでいるとは言い難い。
  本研究課題では、当所で整備されてきた地磁気現象リストと毎分値化されたデジタル値を基に、日本における地磁気極端現象の可能性について調査する。


カ.父島地磁気観測による津波検知の可能性の調査(平成25年度)

[担当者]:

○舘畑秀衛(技術課)

[概要及び具体的な達成目標]:

 地磁気観測は、地球科学のための基礎的な観測データを得る一方、防災的目的の応用として火山活動観測に大きな役割を担っている。もし、地磁気観測のデータが、津波の観測にも応用できるならば、地磁気観測新たなの活用の道が開かれる。
  2011年3月11日東北太平洋沖地震津波では、検潮所、及びGPS津波計等が、ほぼ津波の第一波で全て破壊された。そのため津波の最大波の高さが観測できず、初期段階の救援活動において、気象庁は十分な情報を提供できなかった。抜本的な解決策は、津波計を海岸から離れた場所(高台等)に設置し、遠隔観測する原理と測器を考案することである。手法の一つとして、地球磁場と津波の海水流動によるファラデー効果を利用した津波の遠隔観測が考えられる。
 例えば、東北太平洋沖地震津波では、気象庁地磁気観測点である父島のデータに津波のファラデー効果が見つかっている(例えば舘畑2011など)。父島の様に周囲を海に囲まれている地磁気観測点は、津波によるファラデー効果の検知に有利と思われる他、気象庁検潮観測点でもあり、磁場変動と津波の観測データが共に蓄積されており、本研究の目的に利便性が高い。また、フィリッピン・チリー等からの遠地津波を本邦で最も早く観測できる観測点でもあり、防災的な面でも注目に値する地磁気観測点である。
  最終的に、沿岸地域の壊滅的な被害時でも被害規模の早期推定、災害地救援体制の効率的な配置等に役立つ「欠測しない電磁式津波計」を目指す。


キ.GPS津波計の水平動成分による津波観測の可能性の調査(平成25年度)

[担当者]:

○舘畑秀衛(技術課)

[概要及び具体的な達成目標]:

 励起磁場を計算する数値モデルの精度を検証する。
父島地磁気観測点の様な島嶼の陸上観測点での津波による磁場変動を求めるには、島の周辺から100q前後の沖合までの津波の流速が必要であるが、観測データが皆無なため、数値津波モデルによる理論流速を用いて理論計算を行っており、流速の計算精度が励起磁場の計算結果の精度を支配している。しかし、数値モデルも流速の観測データが無いため、計算結果と観測の比較吟味、計算精度が検証されていない。
  基本となる流速の計算精度を求めるために、3.11 東北太平洋沖地震津波で活躍したGPS津波計のデータを用いる。GPS津波計が垂直変位(津波の高さ)に加えて、2次元水平変位のデータも蓄積していることから、これを時間微分して流速の観測値とし、モデルの理論流速計算の精度検証を行う。これによって、父島周辺での流速計算と磁場変動の計算精度が求められ、この研究手法の確実性が得られる。
 以上を、GPS津波計を考案した東大地震研究所の加藤先生、及び外海波浪と海洋浮体律動の専門家、東京大学大学院新領域創成科学研究科の早稲田先生の助言を頂きながら調査研究する。


ク.Sq電流系の渦中心推定の信頼性に関する調査(平成25年度)

[担当者]:

○笹岡雅宏(観測課)

[概要及び具体的な達成目標]:

 Sq電流系の渦中心の位置は電離圏電流の分布によって決まり、また、その変動は電離圏ダイナモ過程に関係していることはよく知られている。地上の地磁気観測網から推定するSq電流系の渦中心位置に関する先行研究では、Sq電流渦中心の緯度を推定する算出手法について議論され、また他の電流系との相関についても物理的に議論されてきた。地磁気データを用いた従来の手法によるSq電流渦中心の緯度推定は、渦中心に対する電流分布の対象性が良い場合には、信頼性が高い。算出したSq電流渦中心を地磁気観測網のデータから視認で検証したい場合、日本のように主に南北方向のみの観測網では、この渦中心の位置を確認することが必ずしも簡単とは言えない。本課題では、Sq電流渦が観測網を通り過ぎる日中の間、各観測点のX成分の時系列から推測されるSq渦中心緯度並びに、観測点毎に地磁気Sqを時間的に積分して各積分値から算出されるSq渦中心緯度と、特定の時刻のデータのみを用いる従来の手法から求めた結果とを比較する。これら比較が良い一致を示す場合、推定したSq渦中心の信頼性が高い可能性がある。太陽活動が活発な年と低調な年について、Sq電流渦中心の位置を推定し推定結果の信頼性について調査するとともに、Sq電流渦中心位置の変動と電流強度を反映する地磁気日較差との相関について考察する。


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