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ホーム > 調査研究 > 令和2年度地磁気観測所調査研究計画一覧

令和2年度地磁気観測所調査研究計画一覧


重要課題

(1)観測業務の遂行に関する調査研究の課題

ア.地磁気短周期現象の情報活用に関わる調査(平成30〜令和2年度)

[担当者]:

○笹岡雅宏、山ア貴之、浅利晴紀、海東恵美、吉武由紀(技術課)、平原秀行、森永健司(観測課)

[概要]:

 電子機器や人工衛星の利用が現在の社会生活に浸透しており、電波障害や急峻な磁場変化に伴う誘導電流による機器障害など、磁気嵐などの地磁気現象が社会的影響を及ぼすことが懸念される。被害を軽減するための方策には、例えば地磁気現象発生とそれに伴う地電流変動との相関関係の活用や、磁気嵐に先行するsscなどの急変化現象の情報提供などが効果的と期待され、これら地磁気現象の早期把握が課題となる。地磁気観測所では、長期間にわたり蓄積した地磁気及び地電位差の変化観測データを地磁気現象データベースの登録情報として整理するとともに、地磁気活動状況の即時提供コンテンツの開発*1、地磁気短周期現象の統計的調査による適切なQuality(明瞭度、顕著さ)基準値の導出*2、また、変動の激しい磁気嵐に対応する地磁気誘導電流(GIC)の推定*3,*4を試みてきた。地磁気現象データベースは、現象の諸元(観測時間など)をトゥルースとして参照可能となることによる地磁気現象の関連研究への支援が、地磁気短周期現象の早期把握のための調査研究及びツール開発は、地磁気現象の監視への活用が、それぞれ期待される。
 本課題は、高度情報化社会に与える影響を評価するための基礎資料を提供するため、地磁気変動と地電位差変動の比較解析を進め、地磁気現象の特徴を抽出する。また、地磁気観測所のデータ活用の促進及び利用者へ利便性向上のため、地磁気短周期現象データベースの拡充を図るとともに、地磁気短周期現象の早期把握に向けた衛星観測データの有効活用に係る調査研究、及び地磁気短周期現象を自動検出するツールの開発に取り組む。得られた成果は現象監視の業務支援として還元する。

参考文献:
*1 長町信吾,K指数速報値を計算機で算出する新しい手法,地磁気観測所テクニカルレポート 第12巻第1,2号,1-9,2015.
*2 森永健司,大川隆志,地磁気急変化現象ssc及びsiのQuality判定基準の再検討,地磁気観測所テクニカルレポート 第16巻 第01号,1-7,2020.
*3 平原秀行,女満別の変電所で観測されたGIC(Geomagnetically Induced Current)と女満別観測施設における地電流観測値との比較,所内技術資料 2019年08月号,1-5,2019.
*4 平原秀行,1960年11月13日に発生した観測史上最大のSi(Sudden impulse)によるGIC(Geomagnetically Induced Current)の最大推定量,所内技術資料 2019年08月号,6-14,2019.


イ.地磁気絶対観測の自動計測試作器の改良に向けた調査(平成30〜令和2年度)

[担当者]:

○平原秀行、仰木淳平(観測課)、海東恵美、浅利晴紀(技術課)

[概要]:

 地磁気観測は連続観測とそれを較正するための間欠的な絶対観測から成り立っている。連続観測は自動化されているが、絶対観測は手動で行っているのが現状である。絶対観測を自動化できれば、観測の頻度をあげることで連続観測値の精度向上などが期待できる。絶対観測の自動化を目指し、海外で開発が進められている自動絶対観測装置の試験・評価を実施し、問題点の整理と改良の可能性を探り、導入のための技術的検討を行う。また、観測点環境に適合し、かつ保守がしやすい装置に改良するため、国内での独自開発に向けた調査を実施するとともに、偏角および伏角の相対的な時間変化を直接観測する装置の開発を進め、現在の絶対観測基線値を補間するような自動計測器の開発を目指す。


(2)観測成果・技術の利活用に関する調査研究の課題

ウ.電磁気による火山活動評価の高度化に向けた調査(令和2〜4年度)

[担当者]:

○山崎明、笹岡雅宏、山崎貴之、浅利晴紀、増子徳道、稲村友臣、西田重晴(技術課)、船山亘、山際龍太郎、豊留修一、有田真、長町信吾、仰木淳平、下川淳、栗原正宜、弘田瑛士、屋良朝之(観測課)、宮村淳一(所長)

[概要]:

 火山活動の活発化に伴う全磁力変化の観測事例が多数報告されている。これまでに当所が雌阿寒岳や草津白根山で実施してきた全磁力観測により得られた成果*1,*2は、火山監視に対する全磁力観測の有効性を示している。これら全磁力変化は、火山体浅部熱水系の状態変化に起因する熱磁気効果と密接に関係していると推定されており、水蒸気噴火の発生予測に貢献することが期待されている。平成26年御嶽山噴火災害を契機に水蒸気噴火の発生予測への社会的ニーズが高まり、気象庁地震火山部では、平成27年度から水蒸気噴火の前兆を早期に捉えるための新たな観測手法のひとつとして全磁力観測に着目するとともに、その他の多項目観測データの統合解析による火山活動評価手法の高度化に取り組んでいる。
 本調査研究では、地震火山部による火山業務改善の取り組みを技術的に支援するため、火山活動の監視および評価手法の高度化に係る技術開発に取り組む。当所が従前より全磁力連続観測を実施している雌阿寒岳、草津白根山、伊豆大島、三宅島、阿蘇山に加えて、地震火山部が平成27年度以降に連続観測施設を整備した樽前山、吾妻山、安達太良山、御嶽山、九重山、霧島山えびの高原(硫黄山)周辺を対象に、これまでの観測成果のとりまとめ、ノイズ低減手法の技術開発、常時観測化を見据えた効果的な観測のあり方、および観測安定性の検討を進める。

参考文献:
*1 Takahashi K, Fujii I. Long-term thermal activity revealed by magnetic measurements at Kusatsu-Shirane volcano, Japan. J Volcanol Geotherm Res. 2014; 285:180-194.
*2 Takahashi K, Takakura S, Matsushima N, Fujii, I. Relationship between volcanic activity and shallow hydrothermal system at Meakandake volcano, Japan, inferred from geomagnetic and audio-frequency magneto telluric measurements. J Volcanol Geotherm Res. 2018;349:351-369.


エ.地磁気ブロマイド記録のデジタル化(令和2年度)

[担当者]:

○山ア貴之、笹岡雅宏、海東恵美、吉武由紀、増子徳道、西田重晴(技術課)、山際龍太郎、森永健司、有田真、長町信吾、神谷亜希子、下川淳、栗原正宜、屋良朝之、弘田瑛士(観測課)

[概要]:

 100年を超える歴史を持つ地磁気観測所(柿岡)においてもデジタル値として保存済のデータは最近40年余りに過ぎず、それ以前の地磁気観測記録の多くはブロマイド印画紙のアナログマグネトグラムとして蓄積されている。これら過去の観測により蓄積したアナログ記録をデジタルデータ化した上で、当所ホームページで公開することによりデータアクセス性を高め、現象等の検索・閲覧、データ比較、数値計算などの利便性を向上させることで、その価値は飛躍的に高められる。特に、過去の長期にわたるアナログ記録を近年の計測データとデジタルで接続することにより、同一地点での連続した長期データを容易に扱えるようになり、太陽活動の地球環境への影響調査等の推進に大きく貢献することが期待される。


基礎課題

ア.南極昭和基地の地磁気連続観測値の絶対値化に向けた調査(令和2〜4年度)

[担当者]:

○仰木淳平、平原秀行、有田真(観測課)、稲村友臣(技術課)

[概要]:

 昭和基地は1960年に地磁気観測を開始し、観測点の少ない南極域において長期的に観測を継続している貴重な観測点で、その観測項目は絶対観測と変化観測である。絶対観測は地球の主磁場の長期変化をターゲットとし、ひと月に1回手動で地磁気の向きと大きさを測定している。変化観測は電離圏や磁気圏に流れる電流による短周期の変化をターゲットとし、地磁気3成分の変化を24時間365日連続で自動的に測定している。それぞれの観測結果は独立に公開されており、絶対観測の結果を使い変化観測の連続観測値を較正する絶対値化は行われていない。本研究では連続観測値の絶対値化に向け、観測方法の変更やその影響等について調査を行う。
 昭和基地の連続観測値の絶対値化には、観測点運営と科学の二つの面でメリットがある。まず、観測点運営面でのメリットについて述べる。絶対観測は月に1回行っているが、その時得られた絶対値をそのまま月の代表値とするので、上空の電流の影響を避けるため、観測時の地磁気の活動状況に基準を定め(地磁気の静穏条件)、その条件を満たすタイミングで絶対観測を行っている。実際には、地磁気の静穏条件の他に、天気や観測隊全体の作業予定等の条件がすべて整う必要があり、絶対観測を行えるのは月に数日で、状況によっては実施できない月もある。地磁気の活動は予想が難しいため、絶対観測の計画・実行は担当隊員の大きな負担となっている。そこで、絶対値化した連続値を使って地磁気の静穏条件を満たす時間から月の代表値を算出できるようになれば、絶対観測では観測基線値(絶対観測で得た絶対値とその時刻の変化観測で得た連続観測値の差)を得られればよく、地磁気の静穏条件を大幅に緩和できる。天気と観測隊の作業予定はある程度予測と調整ができるので、静穏条件を大幅に緩和することで、絶対観測を計画的に実行でき、担当隊員の負担を大きく減らすことができる。
 次に科学面のメリットについて述べる。変化観測結果として公開している連続観測値はX軸をほぼ磁北に向けて設置した三軸フラックスゲート磁力計の出力値であり、基準となる座標系に変換していないので他の観測点や他の観測項目と比較しにくく、較正もしていないので長期的な精度も保証されていない。絶対値化は真北基準の座標への変換と絶対観測による較正を行うことであり、これにより他の観測との比較が容易で長期的にも高精度なデータを提供できるようになる。特に近年、人工衛星観測と地上観測をあわせて解析した高時空間分解能の地磁気の全球モデルの開発等の研究が行われているが、観測点密度の低い南極域の昭和基地のデータが利用できるようになればモデルの精度向上につながる。また、月の代表値(絶対値)についても、絶対観測を計画的に実施するため欠測がなくなり、上空の電流の影響がより少ない時間のデータから代表値を算出するため、その妥当性も向上することが期待できる。
 連続観測値を絶対値化するためには、定期的な絶対観測で得た観測基線値からすべての時刻の基線値を作成し、その基線値に変化計の連続観測値を加算する必要がある。つまり基線値の精度・安定性が絶対値化された連続観測値に直接影響を及ぼすことになる。本研究では、基線値の精度として、インターマグネット毎秒観測所の基準*1をクリアすることを目指す。インターマグネットは地磁気のデータ流通についての国際標準であり、これをクリアすることでより多くのユーザーに観測データを利用されることが期待できるからである。これまでの調査により、磁力計センサの傾斜が夏季に大きく変化し、現在の月1回の絶対観測ではこの傾斜変化に伴う基線値の変化を十分な精度で追うことはできないことが分かっている*2が、絶対観測の頻度を上げることで基線値の精度を保つことが期待できる。
 連続観測値を絶対値化を目指すため、絶対観測の省力化と高頻度化の試験を行い、担当隊員の負担を増やさずに較正の精度を確保できるかどうかを確認する。省力化に向けて、観測時間の短縮が見込まれる弱磁場方式*3,*4を導入し、現行のひと月1回のゼロ磁場方式と並行してひと月3回程度の弱磁場方式の観測を行い、較正の精度や手法の違いによる影響を調査する。さらに、試験的に絶対値化した連続観測値を用いて静穏な状態から算出した月の代表値と従来の方法での月の代表値の比較検討により、新しい方法を評価する。

参考文献:
*1 INTERMAGNET Technical Manual, https://www.intermagnet.org/publication-software/technicalsoft-eng.php
*2 有田真, 井智史, 仰木淳平, 高橋幸祐, 門倉昭, 源泰拓 : 昭和基地における地磁気観測基線値とセンサーの傾斜の変動, 南極資料, Vol. 64, p. 1-20, 2020.
*3 Jankowski, J., Sucksdorff, C.: Guide for magnetic measurements and observatory practice, IAGA, Warsaw, p. 87-98, 1996.
*4 Worthington, E., W., Matzka, J.: U.S. Geological Survey experience with the residual absolutes method, Geosci. Instrum. Method. Data Syst., 6, 419?427, 2017.


イ.地磁気永年変化の経年成分に関する調査(令和2年〜3年度)

[担当者]:

○浅利晴紀(技術課)、森永健司、長町信吾、栗原正宜(観測課)

[概要]:

 近年の極軌道衛星による連続的な地磁気観測は、地球外核の対流を起源とする地球主磁場の時空間分解能を大幅に向上させた*1。その成果として、地磁気永年変化のうち非常に微小な振幅しか持たない経年変化成分が検出されるようになった*2,*3。更にこのうち比較的顕著で定常的な6年周期振動は、理論的に存在が期待される外核中の電磁流体波「ねじれ振動」*4の存在を示唆するものとされ、特に注目を集めている。しかしながら、その形態やダイナミクスなどの詳細は以下の理由から未だ明らかになっていない。

1. 衛星観測の期間が十数年程度に限られる
2. より長期に及ぶ地表定点観測データベースとそれに基づく永年変化モデルは、現行のものでは経年成分を詳細に検出する十分な精度が無い

 精度の劣る従来の長期間永年変化モデルを用いた外核対流経年振動の検出の試みは既に幾つか報告されているが、それらの結果のばらつきは大きい*5,*6。この原因としては、太陽活動の経年変化の影響などから、特に永年加速(主磁場の2階時間微分)の決定精度の低さが指摘されている。
 本研究課題では、地磁気永年変化の経年成分検出に最適化した長期データセットを作成し、それを用いて永年変化モデリングおよび外核対流振動モデリングを行う。これにより、地表定点観測データのみから抽出する経年成分の精度向上の可能性を調査するとともに、より長期の外核対流振動モデルから外核の経年ダイナミクスを議論する*7。

参考文献:
*1 Finlay, C.C., Olsen, N., Kotsiaros, S., Gillet, N. and Toeffner-Clausen, L., (2016) Recent geomagnetic secular variation from Swarm and ground observatories as estimated in the CHAOS-6 geomagnetic field model. Earth, Planets, Space, 68, 112, https://doi.org/10.1186/s40623-016-0486-1.
*2 Asari, S., Wardinski, I. (2018), Rapid fluctuations of Earth’s core ? Towards a better detection with ground-based magnetic observations. CobsJournal 5 ? Special Issue IAGA Workshop 2018. ISBN:978-3-903171-05-3.
*3 Asari, S., Wardinski, I. (2017), Interannual fluctuations of the core angular momentum inferred from geomagnetic field models, In book: Magnetic Fields in the Solar System, pp.111-123, https://doi.org/10.1007/978-3-319-64292-5_4.
*4 Dumberry, M., 2007, Torsional oscillations, in Encyclopedia of Geomagnetism and Paleomagnetism, Gubbins, D. and Herrero-Bervera, E. Eds., Springer, Dordrecht, The Netherlands, pp. 746-748.
*5 Gillet, N., Jault, D., Canet, E. et al. Fast torsional waves and strong magnetic field within the Earth’s core. Nature 465, 74?77 (2010). https://doi.org/10.1038/nature09010.
*6 浅利 晴紀・栗原 正宜・森永 健司・長町 信吾、地磁気観測による地球回転経年変化への示唆、SGD03-10、日本地球惑星科学連合2019年大会、幕張.
*7 R02基盤研究C計画調書「動的モード分解による地球コア磁気流体波の検出」


ウ.大気電場の変化と短時間強雨を伴う積乱雲の接近の関連の調査(令和2年度)

[担当者]:

○熊本真理子(観測課)

[概要]:

 発達した積乱雲によって、突然の短時間強雨や突風、降雹、ダウンバースト、竜巻、落雷などのいわゆるシビアウェザー(severe weather)は、5~数10分程度の短時間かつ数100m~数km程度の狭い領域で発生し、時には人的被害、家屋や車両の損壊、果樹の損傷、農作物への被害など様々な被害を伴うことがある。これまでの事例によって、レーダーやドップラーレーダーによる積乱雲の3次元構造から、上空の雹域コアや降水コアの形成から落下に至るプロセスが解析されている*1,*2,*3,*4,*5,*6,*7,*8,*9,*10。最近では、フェーズドアレイレーダーによる雹域コアや降水コアの詳細な3次元構造の発達が報告されている*11。しかしながら、シビアウェザーは局所的に発生するため、現在の約17qメッシュのアメダスなどの観測網では、被害や降雹の実態をとらえることが難しい。一方、短時間強雨を伴う雷雲が通過した場合には、概ね5q付近では大気電場がW型(+−+−+)などの特徴的な変化が見られることが、かなり以前から報告されている*12,*13,*14,*15,*16,*17,*18。近年では、地上の複数地点の大気電場の観測網から、雷雲内の正負の電荷分布を算出した報告がある*17,*19,*20。
 地磁気観測所では水滴集電器を用いた大気電場の連続観測を実施しており、これまでの観測成果として、統計調査から雷雲時には急変化がみられることが示され、晴天時や降水時の緩変化については単独の積雲や乱層雲の雲モデルによる電荷パターンが示されている*21。レーダーやLIDENと大気電場から、落雷を伴う雷雲接近時には、−10℃高度のレーダーエコーの反射強度と大気電場の変化の対応が示され、また、降水がない場合も雷雲接近時に、雷雲の3極構造に対応するW字型の変化を示すことが報告されている*22,*23。
 シビアウェザーを事前に察知し、安全な場所に避難するなど、人的被害を防止に役立てることを目指し、水滴集電器とフィールドミルの大気電場データと、レーダーエコー、アメダス及び部外雨量データ、LIDENなどの積乱雲発達推移をとらえた各種データを用いて、シビアウェザーをもたらす積乱雲の鉛直構造の時間変化と大気電場の関係を調査する。
 昨年度実施した降雹を伴う積乱雲4例と大気電場の関連の調査から、降雹を伴う積乱雲の接近時には、5km以内に近づいたときに数10分前から大気電場の変動が見られることがわかった*24。また、2017~2019年の3月~10月期における大気電場の変化が顕著な事例の調査から、発達した積乱雲接近時には、スコールラインなど一部を除き、大気電場の変動が見られたが、実際に降水が観測された場合や観測されない場合もあった。
 今年度は、レーダーエコーと大気電場の時間変化から、直前10数分前に上空の雹域コアの探知の可能性を検討するため、昨年度の成果を踏まえ、雹域コアや降水コアと大気電場の解析、積乱雲接近事例のパターン分類、簡単な構造の積乱雲について電荷モデルを用いた大気電場の見積もりなどの調査を実施する。

参考文献:
*1 中村一・森真理子(1999):1996年7月15日の下館・つくばダウンバースト, 気象研究ノート, (57), 111−123.
*2 奥田泰雄・伊藤 弘(2000):平成12年5月24日関東北部で発生した降ひょう被害, 日本風工学会誌, 84, 15−20.
*3 森真理子・高谷美正(2004):関東地方で発生した降ひょう・ダウンバーストを伴ったスーパーセルの事例解析, 天気, 51(8), 567-581.
*4 出世ゆかり・坪木和久(2006):非定常で短寿命の対流セルのもたらす降雹の水平規模と雹の大きさー2002年5月26日の阪神間の降雹事例についてー, 天気, 53(11), 31-37.
*5 吉田公一ほか (2006):降雹時のレーダー3次元データの特徴,関東甲信地区調査研究会.平成18年度東京管区調査研究会誌.
*6 山下浩史(2007):2005年5月15日東京都八王子に降雹と突風をもたらした積乱雲の特徴について, 天気, 54(9), 21-36.
*7 内田顕司ほか(2010):気象レーダーによる雹(ひょう)の監視の試み, 調査ノート, 天気, 57(8), 112-116.
*8 国土交通省国土技術政策総合研究所、独立行政法人建築研究所(2012):平成24年5月6日に茨城県つくば市で発生した竜巻による建築物被害(速報), 1-16.
  https://www.kenken.go.jp/japanese/contents/activities/other/disaster/kaze/2012tsukuba/120506-tsukuba.pdf
*9 山本晴彦ほか(2013):2012年5月6日に茨城県つくば市で発生した竜巻災害, 自然災害科学, 32-1, 45-59.
*10 林修吾(2015):2014年6月14日に調布・三鷹に激しい降雹をもたらした積乱雲の発達過程, 2015 日本気象学会春季大会予稿集, 気象学会秋季大会.
*11 足立透(2019):フェーズドアレイレーダーを用いた顕著な大気現象の観測, 日本風工学会誌, 44(4), 371-380.
*12 Simpson, G. C. and F. J. Scrase (1937) :The distribution of electricity in thunderclouds, Proc. R. Soc. London, Set. A, 161, 309-352. J.Meteorol. 7, 322-332.
*13 畠山久尚・久保時夫(1946):昭和15年8月中旬以後の雷雨の際の前橋に於ける電位傾度の變化, 中央気象台彙報, 271-275.
*14 今道周一・菊池繁雄(1950):柿岡附近の雷による急變化電場に就いて, 雷の研究, 54-61.
*15 Kuettner, J.(1950):The electrical and meteorological conditions inside thunderclouds, J.Meteorol. 7, 322-332.
*16 北川信一郎(1996):大気電気学, 東京大学出版会, 200pp.
*17 高橋劭(2009):雷の科学, 東京大学出版会, 270pp
*18 藤原博伸ほか(2020):2014年6月24日の降雹セルと非降雹セルの雷活動について, 大気電気学会誌, Vol.14 No.1 (No.96), 107-108.
*19 Jaques, R. and Lacerda M.(2014) :Method LMA-EF for determination of position and intensity of electric charges inside thunderstorm clouds, XV International Conference on Atmospheric Electricity, 15-20 June 2014, 1-10.
*20 山下ほか(2019):雲内電荷推定を目的とした静電界計測網構築の検討, 日本大気電気学会誌, 94, 172-173.
*21 外谷健・角村悟(1998);空中電気変化パターンに関するいくつかの考察, 技術報告, 37 3-4, 58-71.
   TOYA, T., and Tunomura, S. (2008):Discussion of Variation Patterns of Atmospheric Electricity, 地磁気観測所テクニカルレポート 別冊 第06巻, 11-22.(英語版)
   http://www.kakioka-jma.go.jp/publ/journal_DB/pdf_files/technical_report_of_KMO_sup_06_02.pdf
*22 森永健司ほか(2008):雷監視システム支援に向けた大気電場データ活用の基礎調査(平成19〜20年度), 平成20 年度地磁気観測所調査研究業務成果報告書.
*23 長町信吾ほか(2012):冬季雷を対象とした庄内平野における大気電場観測, 日本大気電気学会誌, 101-102.
*24 熊本真理子(2020):降雹を伴う積乱雲と大気電場の関連の調査(令和元年度), 令和元年度地磁気観測所調査研究業務成果報告書.


エ.機械学習によるK指数判定手法の開発(令和2年度)

[担当者]:

○長町信吾、森永健司(観測課)

[概要]:

 地磁気変動の活動程度を表す指数のひとつにK指数がある。1日を3時間ごとの8区間に分け、各区間において地磁気の変動の振幅を準対数的に0〜9の10階級で評価するもので、地磁気観測所では柿岡、女満別、鹿屋の3地点のK指数を公表している。K指数を測定するためには、実際の地磁気変化から、想定される静穏時における日変化を取り除かなくてはならない。1930年代にはじまるK指数の黎明期から、観測者の経験に基づいて推定された日変化曲線をアナログ記録に鉛筆等で書き入れ、スケールを記録紙に当てて指数を読み取るという手法(以下、ハンドスケーリングと呼ぶ)で行われていたが、観測データがデジタル値で取得できるようになった1980年代以降には計算機による手法がいくつか開発された*1。計算機のよる手法は当所でも試験が行われたが*2,*3、満足のいく正答率を得ることができず、現在でも報告値はハンドスケーリングによる読み取り値を採用しており、計算機による読み取りは速報的な判定に利用するのみにとどまっている*4。
 これまでの計算機による手法は、何らかの数学的アルゴリズムを用いて日変化を推定するものであった。しかし、K指数として計測されるべき地磁気変化は、数分から数日間という非常に広い周波数領域にまたがるため、日変化と数学的に分離することが難しい。このため、計算機による日変化の推定と熟練の観測者の経験に基づく推定との間に大きな乖離が生じることがあり、これが計算機による手法では満足いく正答率が得られなかった大きな理由である。そこで本研究では、熟練の観測者が持つ経験則を機械学習によって計算機上で再現するという新しい試みによって、精度の高いK指数判定を目指す。

参考文献:
*1 Menvielle, M., Papitashvili, N., Hakkinen, L., Sucksdorff, C., Computer production of K indeces: review and comparison of methods. Geophys. J. Int. 123, 866-886, 1995.
*2 山田雄二,K指数決定のデジタル化について─LRNS法の場合─,地磁気観測所技術報告,37,58-68,1997.
*3 小池捷春,玉谷智佐,長谷川一美,デジタルK採用に関する調査─試験運用結果とその評価─,地磁気観測所技術報告,38(1),1-10,1998.
*4 長町信吾,K指数速報値を計算機で算出する新しい手法,地磁気観測所テクニカルレポート 第12巻第1,2号,1-9,2015.


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