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ホーム > 調査研究 > 平成25年度地磁気観測所調査研究基本方針

平成25年度地磁気観測所調査研究業務基本方針


I.地磁気観測所の調査研究が果たすべき役割

1.施策目標との関連

 地磁気観測所は、その施策目標として、地球電磁気的手法による地球環境の監視と防災業務への貢献を掲げることとし、このための手段として、

   (1) 地球電磁気的手法による地球環境の観測の的確な遂行
   (2) 観測データ並びに当所の保有する技術の適切な公開

を実施するとともに、

   (3) 地球環境監視並びに防災業務へ観測の成果を高度に活用するための手法の開発

を推進することとする。
 当所における調査研究業務は、これらの業務を高度化し、より的確に実施するために行うものである。


2.本年度の目標

 極端な磁気嵐現象は、発生頻度は低いが一旦発生すると高エネルギー粒子や地磁気誘導電流(Geomagnetically Induced Current, GIC)による災害を引き起こし、電力、GPS等衛星測位システム、航空運輸などに大きな影響を与える。K-indexなど地磁気に関わる情報作成の迅速化は、国民に情報を速やかに伝達するために必要であり、実用化を目指して技術開発を進める。
 一方、極端現象の調査には長期間のデータが必要とされるが、柿岡には1924年以降のアナログ記録(印画紙)がかなり良い状態で保存されている。これを自動読み取りプログラムによりデジタル毎分値化してデータ公開を進める。これにより、変動の激しい巨大磁気嵐の研究に必要な高い時間分解能のデータが得られる。
 地磁気観測は連続観測とそれを較正するための間欠的な絶対観測から成り立っている。連続観測は自動化されているが、絶対観測は手動で行っているのが現状である。この絶対観測の自動化を目ざし、国立極地研究所及び東京大学地震研究所と共同で、自動絶対観測装置の試作器の試験・評価を実施し導入のための技術的検討を行う。
 国民の安全・安心に直結する火山活動の監視・予知に関して、地磁気全磁力観測による火山活動評価に一定の成果が認められている。気象庁各火山監視・情報センターの業務に全磁力繰り返し観測の項目が入り観測データが蓄積されてきたことを踏まえ、より高度な火山活動監視のために水蒸気爆発型の噴火について重点的に調査研究を進める。


II.観測業務の遂行に関する調査研究の課題

1.地磁気観測

○ 施策目的

 地磁気変化観測データについては、人工擾乱計測システムを活用し、各種擾乱の影響を補正し、公表値としている。近年、観測所・観測施設周辺の開発などの影響により人工擾乱の発生頻度が益々高くなってきており、また、今日の厳しい行財政事情にもとづく業務の減量・効率化への要請に応えるためにも、この補正処理をより一層効率的に行うことが必要となっている。
 また、GPS等人工衛星の利用が各分野へ広がることにより、磁気嵐などの地磁気現象が日常生活にも大きな影響を及ぼす可能性が高まっている。地磁気現象についての情報の利用価値を高めるには、地磁気現象データを速やかに公開することが必要である。このため地磁気現象読み取りを効率的かつ客観的に行い、現象発生を早期に把握し、さらに、その公開方法を改善する必要がある。

○ 調査研究への取り組み

 地磁気連続観測データに含まれる人工擾乱の影響などのノイズを把握し、効率的に除去・補正するための手法を開発するとともに、補正処理結果の妥当性について客観的評価を行う。
 地磁気現象を効率的かつ客観的に検出するための手法の開発を目指すとともに、得られた情報をより活用しやすい形で、迅速に公表するための調査を行う。また、地磁気現象データの統計的調査研究や人工衛星で観測された外部情報などを活用した地磁気現象の早期把握に向けた研究に取り組む。

 推進すべき課題:「人工擾乱補正処理効率化のための開発研究」(重要課題)]
 推進すべき課題:「地磁気現象検出の迅速化と地磁気現象に関する情報活用に関わる調査」(重要課題)]

2.地磁気絶対観測

○ 施策目的

 地磁気観測は連続観測とそれを補正する間欠的な絶対観測から成り立っている。連続観測については遠隔操作を含めて自動計測、収録が実現しているが、磁性などの問題のため、自動測器による定常的な絶対観測は未だ実現していない。しかしながら現在の地磁気絶対観測で広く用いられている角度測定器・FT型磁気儀が将来にわたって供給されるのかなど不確実な要素もあり、今後の地磁気絶対観測の方法について検討は避けて通れない課題であると考える。また地磁気絶対観測の自動計測は、地磁気観測所の業務にも大きな効率化をもたらすものであり、現在の技術動向を広く活用し自動化の可能性に関して調査を進める必要がある。

○ 調査研究への取り組み

 地磁気絶対観測の自動計測手法について、当所ではこれまで現状の絶対観測の手法を準用した偏角(declination)、伏角(inclination)測定の方法(DI方式)と、可動式のコイルと磁力計を組み合わせる方法(ベクトルプロトン方式)を検討してきた。
 DI方式については、現時点で実用化には至っていないが、海外で自動絶対観測装置の試作・試験が行われ、国内においても測器の開発が始まっている。一方、ベクトルプロトン方式については、平成23年度までの当所における調査により、これまで難しいとされていた偏角についても絶対観測値の計測が可能であることが示されたが、試作器の作成は困難である。
 平成25年度は調査の重点をDI方式に置き、自動絶対観測装置の試作器の試験・評価を実施し導入のための技術的検討を行う。この検討には、国立極地研究所および東京大学地震研究所と共同であたる。

 [推進すべき課題:「地磁気絶対観測の自動計測手法の調査」(重要課題)]


V.観測成果の公開に関する調査研究の課題

観測データの公開に関連した調査

○ 施策目的

 観測成果の公開における重点課題は、一般国民に対して磁気嵐観測情報(地磁気の乱れに関する情報)を迅速に発表することと、発生頻度は低いが社会生活に大きな影響を与える極端な磁気嵐現象について調査研究を進めることである。
 平成24年度にはホームページを通じた情報発信に力を入れ、地磁気活動状況をK指数とともに即時的に把握できるシステムの開発、磁気嵐の発生、終了、擾乱の規模をホームページで遅滞なく確認できるシステムを開発した。また、デジタルデータサービスを一新し、観測開始時点からの地磁気、地電流、空中電気の数値データをメタデータとともに公開し、新たに観測したデータもほぼ遅滞なく利用できるようにした。これらにより、即時的なニーズには一定程度応える体制ができた。
 極端な磁気嵐現象に関しては世界的な関心が高まっており、WMO、ICAOにおいて宇宙天気情報に関する検討が始まっている。1000年に一度クラスの巨大磁気嵐は電力・GPS等衛星測位システム・航空運輸等のインフラに甚大な損害をもたらすと考えられるが、その調査研究は始まったばかりである。当所には約100年間の地磁気観測データがあり、極端現象の調査研究に必要な長期間のデータが揃っている。しかし、1970年代以前の地磁気データは地磁気アナログ記録(ブロマイド)で保存されており、数値データは毎時値しかないため変動の激しい極端現象の研究には不向きである。従って、アナログ記録を高精度、高時間分解能の数値データへ変換することが最重要課題となっている。

○ 調査研究への取り組み

 平成22年度から3か年計画で進めてきた、地磁気ブロマイド記録によるデジタル毎分値に関する調査は、平成23年度までに自動読み取りプログラムの開発があらかた終了し、アナログ記録を十分な精度でデジタル毎分値へ変換することが可能となったため、平成24年度からは実用段階に入った。平成24年度には、京都大学地磁気世界資料解析センターと共同でデータベース科研費を用いて業者によるアナログ記録の画像スキャンを行い、自動読み取りプログラムの調整を進めて、柿岡の1964年〜1975年の12年分のデジタル毎分値を作成した。
 平成25年度は、前年度に引き続き、柿岡の地磁気の1944年〜1963年の20年分のデジタル毎分値を作成する。これらの成果は、当所ホームページのデジタルデータサービスを通じて、速やかに公表する。また、未変換のアナログ記録のデジタル化を進めるため、外部機関との協力を積極的に進める。

 [推進すべき課題:「地磁気ブロマイド記録のデジタル毎分値化」(重要課題)]

IV.観測成果・技術の利用に関する調査研究の課題

地震及び火山噴火予知関連

○ 施策目的

 科学技術・学術審議会において、「地震及び火山噴火予知のための観測研究計画の見直しについて(建議)」(平成24年11月28日)が出され、その中で、電磁気学的観点など研究の可能性の幅を広げる努力も必要であると明記された。火山噴火予知については、地磁気全磁力観測による火山活動評価に一定の成果が認められており、気象庁火山監視・情報センター業務に全磁力繰り返し観測が取り入れられ、昨年度末には草津白根山全磁力データの準リアルタイム伝送が始まった。
 当所は火山監視技術の高度化、新たな技術開発を目指し、気象庁の監視・予報業務へ貢献していく。これまでの手法は火口周辺での地磁気全磁力値の変動から地下の熱活動の消長や活動域の移動などを推定するというもので、阿蘇山・雲仙岳・三宅島・伊豆大島・草津白根山・吾妻山・雌阿寒岳などにおいて、火山活動時の全磁力変化が熱活動の理解に有効であることを示してきた。今後は、気象庁、気象研究所、大学などと協力し、地磁気を含めた総合的な地殻活動観測を行うことによりマグマや熱水活動の様態を詳細に把握する技術開発を目指す。
 地震に関しては、昨年度までの調査研究で、平成23年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震において、北海道〜中部日本の各地磁気観測点における全磁力連続観測データにこの地震による地磁気変動と見られる現象が捉えられている可能性が明らかになった。このような現象は地震に関連する地磁気変動が捉えられた数少ない事例であり、この現象の変動原因を明らかにする事が重要である。

○ 調査研究への取り組み

 気象庁各火山監視・情報センターとの協力を推進し、より高度な火山活動監視の実現を目指すため、特に水蒸気爆発型の噴火について重点的に調査研究を推進する。昨年度は、草津白根山の1976年からの繰り返し観測・連続観測データの精査を行い、熱源の時間的推移を明らかにして、火山活動と熱水系の関係を推定した。平成25年度は、雌阿寒岳に重点をおき、2008年噴火時の熱・圧力状況の理解を深めるため構造探査を行い、連続観測点増設によって熱源の推定能力向上を図る。
 東北地方太平洋沖地震に関連する地磁気変動について調べるため、これまでに日本国内の地磁気観測データを検討し地震以外の原因による地磁気変動を除去して解析を行ってきた。平成25年度はさらに詳細な解析を進め、調査結果をまとめる。
 伊豆半島東部では、期待される地殻変動に関わる変化に比べて人工ノイズや超高層起源変化の振幅が大きく、全磁力観測データから地殻変動に関わる変化を検出するための手法について詳細な検討を要した。不要成分の除去には一定の成果が得られたことから、平成25年度は今までの地殻変動と地磁気全磁力変化の関係調査をまとめる。

 [推進すべき課題:「活動的火山における地殻活動と地磁気変化の対応関係に関する調査」(重要課題)]
 [推進すべき課題:「東北地方太平洋沖地震に関連する地磁気変化」(重要課題)]
 [推進すべき課題:「伊豆半島東部における地磁気全磁力及び自然電位観測」(重要課題)]


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