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本研究は、気象庁で運用されている雷監視システムの支援に向けて、雷雲接近時に観測される大気電場の急変現象を調査し、その変動特性等の基礎資料の充実を目的としたものである。
平成20年度(2008年度)の調査では、雷雲が地磁気観測所の上空を通過する際の電場の変動と気象レーダーとの対応を調査した。調査事例として、2006年4月21日に、地磁気観測所上空を通過した雷雲を対象とした。
2006年4月21日03〜04時(時刻は世界標準時を使用)にかけて、地磁気観測所上空を雷雲が通過した際の大気電場の変動を、対応する-10℃の気温高度のレーダーエコー強度で区分けして図1に示した。-10℃の気温高度は雷雲中で雹(ひょう)や霰(あられ)が作られる高度であり、この雹や霰がぶつかり合うことで、雷雲中の電荷分離が発生すると考えられる。
大気電場の極性変化と、レーダーエコー強度を比較すると、エコー強度20dBZ(※)を境に極性の変化が見られる。また、大気電場の変動は-10℃高度のエコーが水平距離約10kmに近づいたところからプラス方向に変化し、レーダーエコーの移動方向前面の15dBZ以下の比較的弱いエコー領域が差し掛かると同時にマイナス方向へ極性が変化している。
この事例解析結果を元に、他の事例でも同様の変化が捉えられているかを検証したところ、大気電場の極性変化とレーダーエコー強度との対応は、前述の事例とほぼ共通していた。ただし、雷雲接近時にはじめに大気電場がプラスマイナスのどちらの極性に変化するかは、事例毎に異なっていた。
これらの調査の結果、以下のような結果が得られた。
この調査で、雷雲通過時の大気電場の極性変化について(-10℃高度の)レーダーエコー強度に相関があることがわかった。今後も雷雲通過時の大気電場の変動について、事例をさらに積み重ねて解析を進めたい。
(※)dBZとは、雨粒に反射してレーダー受信機に返ってくる反射強度を表す単位。