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伊豆大島三原山は、1986年の噴火から23年が経過し、過去の噴火例からみて8年〜16年後に次の噴火が起こると予想されている。気象庁地磁気観測所は、地磁気全磁力観測によって火山活動に伴う地下の熱活動を捉える事を目的に、三原山北側火口縁(図1)に磁力計を設置して2007年から連続観測を開始した。
火山活動に起因する地磁気変動(以下、火山性変動)は微小であると想定されるので、地磁気全磁力の観測データから火山性変動を抽出するには、観測データに含まれる振幅の大きな広域的変動、すなわち地球中心核起源及び電離圏・磁気圏起源の磁場変化を取り除く必要がある。観測点MIK2の全磁力観測データについて、広域的変動を取り除くために島内にある別の観測点(OSM:東京大学地震研究所)との差をとった結果を、図2にMIK2-OSMとして示した。広域的変動を取り除いた後も、基準としたOSMとの差に約10nTの年周変化が残っている。
観測点は、噴出し固化した溶岩、すなわち磁性の強い岩石の上に位置している。地表面近くの岩石は、温度変化に伴い季節的な磁場変動をもたらすことがあり、これが年周変化の原因の1つと考えられている。火山性変動を抽出するためには、このような変化も取り除く必要がある。検出器近傍の数カ所で深さ約1mの地中に温度センサーを設置して地中温度を計測したところ、地中温度変化と全磁力変化には高い相関が見られた(図2の地中温度MIK2)。これを用いて地中温度変化による影響を補正したところ、年周変化をおよそ取り除くことができた(図2のMIK2-OSM(温度補正後))。このような補正を行うことによって、5nTを超えるような火山性変動であれば捉えられるようになったと考えられる。今後は、更に観測点の特性の把握を行い、より微小な火山性変動の抽出を目指す。