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平成21年度調査研究のトピックス(3)

吾妻山における地球電磁気観測

吾妻山は福島県と山形県の県境に位置する、一切経山や吾妻小富士などのいくつかの火山から成る火山群である(図1)。最後の噴火は、1977年12月に起きた小規模なものであったが、2008年11月に一切経山の大穴火口で火口縁上300m以上の高さの噴気が発生し、以降現在まで噴気活動が続いている。


図1
図1 吾妻山(東吾妻火山)の航空写真
大穴火口から噴気が見られる。挿入図の赤三角は吾妻山の位置を表す。(気象庁の吾妻山のページから抜粋した写真及び図に追記)

仙台管区気象台火山監視・情報センターは、震動観測、火山ガスの観測、GPS測量などによる火山活動監視のほかに、2003年から大穴火口を囲む12地点で全磁力繰り返し観測(*1)を行っている。最近の観測結果では、大穴火口付近において熱消磁(*2)を示唆する変化が捉えられている。

地磁気観測所では、仙台管区気象台火山監視・情報センターの協力を得て、電磁気的な調査観測を計画し、気象庁の定常的な観測項目にはない自然電位観測(*3)を行うことにした。2009年度は、6月に予備的な観測を行い、10月に大穴火口付近を囲むように観測を実施した。

図2に2009年10月28日から30日にかけて実施した自然電位の観測結果を示す。ベース地点(図中の自然電位BASE)を基準(0mV)とした電位を色分けして示した。暖色系ほど電位が高いことを表す。全体として自然電位の変化は小さい。大穴火口の噴気口の北側では概ね電位が低くなっており、標高が高くなると電位が低くなる、いわゆる「地形効果」の可能性が考えられる。一方、噴気口から南へ下る斜面で、電位が高くなっている様子が見られる。これは、熱水の上昇の可能性を示唆しているが、さらに精査する必要がある。


図2
図2 2009年10月の吾妻山における自然電位観測の結果。自然電位BASEを基準とした電位を色分けして示した。等高線間隔は20m。地図の作成には、国土地理院による「基盤地図情報(数値標高モデル)10mメッシュ(標高)」を使用した。

*1: 繰り返し観測
同じ観測点で一定期間をおいて反復して行う観測。通常、観測装置は観測のたびに設置する。年1-2回程度の頻度で行われることが多く、過去の値と比較することで値の変動を見る。

*2: 熱消磁
磁鉄鉱などの磁性鉱物を含む岩石は磁石の性質(磁性)を持っている。この磁性は温度が上昇すると弱くなり、ついには消失するという性質を持っている。この現象を熱消磁と呼んでいる。

*3: 自然電位観測
地表に分布する電位を電極を用いて測定する観測のこと。その電位を自然電位と呼ぶ。自然電位の変化は、地下水の流れに大きく影響される。通常、標高が高くなると電位が低くなり、これは、正の電荷を含む地下水が上から下へ流れていることに対応していると考えられている。また、火山活動が活発になると地下水が熱せられたりして上昇する場合がある。このときは逆に、標高が高くなると電位が高くなるような分布が見られることがある。


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