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われわれが活動する地上付近の大気には、1メートルあたり100Vくらいの電圧がかかっている(上がプラス、下がマイナス)。これを大気電場といい、静穏なときには世界中で同様の変化をすることが知られている。世界標準時で16時から20時くらい(日本時間では午前1時から4時くらい)に値が大きくなるカーブを描くが、その観測点が昼であっても夜であっても、ピークの時間帯は同じであるというおもしろい性質がある。
南極の昭和基地でも、この大気電場の観測が行われている。昭和基地はオーロラがよく出現する場所として知られているので、たとえばオーロラに伴って電気を帯びた粒子が上空に降りこんできたときに大気電場はどう変化するのか?など、極域ならではの現象を研究のターゲットにすることができる。
しかし、昭和基地のデータには地表付近の現象によると見られるノイズが多く、上空の電場の状態をうかがうことのできる、静穏な時間帯のデータを取り出すのは至難であった。地上気象と電場の関係について調査をしていくと、風と雲がデータにノイズを与える事がわかってきた。曇天の時は、上空の電場の現象は雲の影響で検出することができない。また、風が強いときは、昭和基地では乾いた雪が舞いあがり(写真1)、さらさらの雪が激しく動くと摩擦電気を帯びるので、大気電場データにノイズをもたらす。
本研究では、昭和基地における2年分の風と雲、そして大気の電場データを統計的に調査して、静穏な時間帯を取り出す気象の基準を検討した。その基準に沿って取り出したデータで昭和基地での大気電場の一日の変化をみると、前述の世界共通のカーブが見えてきた(図1)。
しかし、こうして取り出した"静穏な時間帯"は、観測値全体の一割弱にすぎない。静穏な時間帯にオーロラが出現した事例がないか調べたところ、ひとつ見つけることができた。写真2は2007年9月6日に撮影したオーロラである。図2に、その際にオーロラに伴って起こった地磁気嵐と大気電場の変動を示す。大気電場には地磁気の変動に先がけた変化があるようにも見えるが、この一例だけでは断定はできない。
昭和基地では、現在も大気電場の観測が続けられており、今後、データが積み重ねられることによって、地球の電磁気的環境を調査する上で、新たな展開がはじまるかもしれない。