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平成23年度調査研究のトピックス(1)

絶対観測頻度軽減に係る調査

研究代表者:福井 敬一

地磁気観測において精度の高い、連続観測値を得るためには、「絶対観測」と呼ばれる観測によって、 連続観測用の磁力計で測定された磁力値を補正しなければならず、必要精度を維持するため、 現時点では手動操作により週1回絶対観測を実施する必要がある(この補正値を観測基線値と呼ぶ)。 特に遠隔地での地磁気観測を効率的に行うためには、絶対観測の頻度を軽減することが有効である。 このため、絶対観測結果の定量的評価法の高度化、地磁気連続観測の安定性の評価および人工擾乱への対処法を確立するなど、 必要精度を保ちながら絶対観測の間隔を見直すための調査を実施した。 ここでは女満別、鹿屋両観測施設において観測精度を維持しつつ絶対観測の間隔を延長することを可能とした新たな補正・予測手法に関して紹介する。

絶対観測では過去の観測値から予測される値とその回の観測値との差(予測誤差)が定められた基準内にあるかどうかの良否判定を行い、 基準からはずれた場合、再観測を行うことで異常値を排除し、必要な精度を確保している。 再観測の結果も同様に基準を超えた場合はその観測値は正しいものとして採用することで、真の変化があった場合でも対応できるようにしている。 一般的に、観測間隔を延長すれば予測誤差は大きくなり、同じ基準値を用いれば再観測となる場合が多くなる。 再観測となる頻度を同じ程度とするには、良否判定の基準を大きくする必要があり、この場合、観測精度を落とすことになる(図1)。 再観測の頻度を増加させることなく精度を維持し、絶対観測の間隔を延長するには、観測値に含まれる既知の変動要因を除去するとともに、 予測手法を改善することが必要となる。また、絶対観測を間引いても絶対観測の間の補正値(図1の基線値)が、 間引く前の基線値と基準内で一致することも必要である。

従来、この判定のため、傾斜補正済み基線値(図2の緑印の値)を用いて過去の観測値と比較する手法(従来手法)を用いていたが、この方法で必要な精度の良否判定を行うためには週1回以上の頻度での観測基線値が必要であった。昨年度実施した調査研究により地磁気観測施設地下土壌の磁化は温度に応じて変化し、地磁気観測データに含まれていた季節変動は地中温度の年周変化で説明可能なことが分かった(⇒平成22年度の成果)。この成果を基に、傾斜およびセンサー温度に加え地中温度補正を施した観測基線値(図2の赤印。地中温度の観測は2011年から開始されたため、ここでは近隣のアメダス観測点の気温から推定した値を使用)の直近1〜3回の値から予測値を求め、絶対観測結果を評価する手法を開発した。この手法を適用することにより、毎週実施している絶対観測の頻度を隔週1回としても女満別、鹿屋において必要とされる基準(水平、鉛直成分0.3nT、偏角成分0.03’)で観測結果の良否判定を行え、かつ、再観測の頻度も従前と同程度に抑えることが可能であることが分かった。図3に女満別の観測基線値水平成分における従来手法による予測誤差と隔週観測となった場合に従来手法および新手法で得られる予測誤差を、表1に女満別における予測誤差の標準偏差と再観測基準を超える観測の割合を示した。

また、観測基線値のみならず、絶対観測時以外の基線値についても精度が維持されている必要があるが、これについては地中温度補正した観測基線値の安定性の調査や、複数の測器に対し求められた観測基線値の比較を行うことで、隔週にしても問題がないことを確認した。

この手法では隔週観測への延長程度が限度であり、さらなる絶対観測の効率化のためには、現地における人手を介した観測から無人自動観測への移行が必須となる。この目的のため、当所では「地磁気絶対観測の自動計測手法の調査」の研究を実施し、種々の方法の検討を進めている。


図1

図1 地磁気絶対観測における観測値(観測基線値)の良否判定



図2

図2 女満別の地磁気水平成分の観測基線値()、傾斜補正した基線値()、傾斜、センサー温度および地中温度(女満別空港における気温から推定)から予測した基線値(

図3

図3 女満別の観測基線値水平成分に対する毎週(青線)および隔週(丸印)観測した場合の予測誤差

上段は従来手法による。下段は毎週観測に従来手法、隔週観測に新手法を適用した場合の比較。赤線は良否判定の基準値。

表1

表1 女満別における毎週および隔週の絶対観測における予測誤差の標準偏差と再観測となる頻度



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