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平成24年度調査研究のトピックス(2)

地磁気現象検出の迅速化と地磁気現象に関する情報活用に関わる調査

研究代表者:大川 隆志

太陽風のエネルギー変動と磁気圏や電離圏の擾乱過程は非常に密接な関係があり、太陽フレア(太陽面爆発現象)に伴って磁気嵐が発生しているときは、高エネルギー粒子による人工衛星の機器回路の故障やデリンジャー現象として知られる短波通信障害、急峻な磁場変化に伴う誘導電流による機器障害、航空機乗務員の被曝線量増加などが起きることがあります。GPS等の人工衛星を利用した機器が私達の生活に浸透しており、磁気嵐などの地磁気現象が日常生活にも影響を及ぼすことが懸念されます。そのため本調査は、地磁気現象を迅速かつ適正に検出する手法を構築し、地磁気活動状況の把握及びそれらの情報を速やかに提供することを目標としています。ここでは今年度実施した調査例をいくつか紹介します。

地磁気変化の擾乱度を示す指数のひとつに地磁気K指数があります。地磁気は静穏な日でも昼側の電離層が暖められて生じる風で荷電粒子が動き、それに伴う地磁気の日周変化が見られます。K指数はこのような地磁気の静穏な日変化を除いた擾乱の程度を3時間毎(1日8区間)に0〜9の10段階で表すもので、気象庁地磁気観測所には過去約80年のデータが蓄積されています。これらは主にハンドスケール読み取りによるものです。当観測所では、IAGA(国際地球電磁気学・超高層大気物理学協会)が承認するデジタルデータを用いた計算手法のひとつであるLRNS法(Linear-phase Robust Non-linear Smoothing method)で算出する静穏日変化を参考値として使用していますが、擾乱の形(周期)によっては結果が大きくずれることがあるため(図1)、観測者が簡便に確認・修正を行えるアプリケーションを用意し、ルーチン作業への導入を行いました。


図1

図1 想定する地磁気静穏日変化の修正例(2013年 2月 8日)

上段:地磁気水平成分の生の記録(地磁気静穏日変化以外の乱れがのっている)
 中段:LRNS法で算出した静穏日変化曲線(地磁気静穏日変化以外の乱れがとりきれていない)
 下段:観測者が想定した地磁気静穏日変化


LRNS法によるK指数は、現在,最も適正な結果が得られる15時(UTC)を区切りとした24時間のデータを用いて算出していますが,今後、よりリアルタイムに近いタイムスケジュールで得られるような方法を検討しています。

また、太陽風衝撃波によって作られる地磁気の急始変化を的確に検出することは地磁気活動状況把握と速やかな情報提供に不可欠です。ひとつの試みとして水平成分の1分間の変化量(α)が3nT以上で、かつαと10分間中の波の平均振幅との比が3.5以上の現象を抽出した例を図2に示します。このようなサンプルを蓄積して適正なパラメータを求め、周波数解析や太陽風情報と組み合わせることで検出精度の向上を図っていきます。

当所では地磁気現象の重要度を把握するために、個々の現象を顕著さ(明瞭度)によってクラス分けをしていますが、この判定基準の適否についてもこの調査で行っています。同じ急始変化でも、後続に磁気嵐を伴うsscと磁気嵐を伴わない急始変化siについて異なる基準を用いていますが、物理過程は同等と考えられ共通の判定基準を適用する必要があります。また、脈動現象については従来、最大振幅のみでクラス分けをしていましたが、周波数解析による的確な区分と現象抽出を行う方法の検討を行っています。図3はpi2(周期40〜150秒の脈動現象)のクラス分けの例を示しています。

これらの調査を通して、地磁気現象を常時モニターし、地磁気活動に関する情報を速やかに利用しやすい形で提供できるように、手法の改善を進めているところです。

図2

図2 地磁気急始変化の検出例(水平成分,2012年6月16日)


図3
図3

図3 地磁気0.1秒サンプリング値(2012年10月13日11〜12時UTC)

上段:ハイパスフィルター(0.0067Hz)通過後のデータ

下段:0.1秒値生データを5分ずつずらしながら順次819.2秒分のパワースペクトル(窓関数:ハニング窓)をpi2(周期40〜150秒)の周波数域で積分。
A、B、Cは従来の方法による脈動現象のクラス分け。



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