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研究代表者:山崎 明
活動的な火山ではマグマの上昇や地下の熱水系の発達などにより、岩石の磁化が弱まり地磁気が変化したり、比抵抗が下がるなどさまざまな地球電磁気的な変化が発生します。地磁気観測所では主に全磁力観測による火山活動の監視手法の研究に取り組んでいますが、ここでは雌阿寒岳での全磁力観測について紹介します。
雌阿寒岳は北海道の東部に位置し、有史以降たびたび水蒸気噴火を起こしている活火山です。地磁気観測所では1992年から全磁力の繰返し観測、2003年からは全磁力の連続観測を開始しています。全磁力の繰返し観測は毎年6月頃に実施し、全磁力変化の空間的分布を調べています。図1に雌阿寒岳の全磁力観測点の配置図を示します。
図2に全磁力連続観測点MEAの全磁力変化を示します。この図を見ると全磁力が増加したり減少していますが、全磁力が増加するときは火山地下の温度が下がり岩石が帯磁し、全磁力が減少するときは温度が上昇し岩石が消磁することを示しているものと考えられています。2008年11月にポンマチネシリ96-1火口で水蒸気噴火が発生しましたが、この噴火の2日前に全磁力が急激に減少しており、噴火の前兆を捉えたものとして注目されました。続いて、噴火後も全磁力が大きく減少しました。この全磁力変化をもたらした原因として、全磁力繰返し観測から、96-1火口南斜面の地下約800mで熱消磁が発生したとの解析結果が得られました。
最近では2015年の3月頃から全磁力が減少する変化を示しており、火山地下の温度が上昇しているものと推定されています。このように、地磁気は火山内部の熱活動を監視するのに非常に優れた観測であると言えます。
図1 雌阿寒岳における全磁力観測点配置図 ◎全磁力連続観測点(MEA,ME2,ME3) ○全磁力繰返し観測点
図2 MEA観測点における全磁力変化(基準点は女満別観測施設)