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研究代表者:山崎 明
活動的な火山ではマグマの上昇や熱水系の発達などにより、岩石の磁化が弱まり地磁気が変化したり、比抵抗が下がるなどさまざまな地球電磁気的な変化が発生します。地磁気観測所では主に全磁力観測による火山活動の監視手法の研究に取り組んでいますが、ここでは草津白根山での全磁力観測について紹介します。
草津白根山は群馬県と長野県の県境に位置し、有史以来たびたび噴火を繰り返している活火山です。近年では1976年に水釜で水蒸気爆発、1982〜1983年に湯釜で水蒸気爆発が発生しました。地磁気観測所では火山活動と地磁気変化の対応関係を調べる目的で、1976年から全磁力の繰り返し観測、1990年からは全磁力の連続観測を行っています。図1に草津白根山における全磁力連続観測点の配置図を示し、図2に1990年から現在までの連続観測の結果を示します。ここで全磁力観測の基準点は草津白根山の南方約60kmに位置する東京大学地震研究所八ヶ岳地球電磁気観測所です。
これまでの観測において、1990年に火山性地震活動の活発化と共に、湯釜の南側の観測点で全磁力の減少、北側の観測点で全磁力が増加する変化が観測され、湯釜の地下で大規模な熱消磁が発生したことが推定されました。その後、2000年頃からは逆に火山体の冷却を示す帯磁の変化傾向が続きましたが、2013年以降はほぼ一定の状態を保っています。2014年の火山性地震活動が活発化した際には、小さいながら熱消磁を示す全磁力変化が観測されました。
このように、全磁力変化から草津白根山の地下の熱活動の状況を把握することができ、火山を監視する上での有効な観測の一つになっています。
図1 草津白根山における全磁力観測点配置図
■:全磁力連続観測点(観測中)
□:全磁力連続観測点(2012年5月観測終了)
図2 各全磁力連続観測点における全磁力変化
基準点は東京大学地震研究所八ヶ岳地球電磁気観測所(Y)。