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地磁気観測所要報 第28号, p.1, 2000年3月


中低緯度における地磁気擾乱への極起源グローバル電離層電流系の寄与について


角村悟


要旨

 極起源電離層電流系の特性を調べることは,中低緯度における地磁気擾乱の研究にとって重要である。この論文の目的は中低緯度で観測される地磁気擾乱に関わる極起源電離層電流系の性質を定量的に明らかにすることである。この論文は二つの部分で、構成される。一つは赤道増加を含んだ極起源電離層電流系の数値解析,他方は中低緯度における地磁気急始部(SC) の特性調査にあてられる。後者は中低緯度におけるSCの地磁気変化への極起源電離層電流系の寄与を明らかにすることを目的としている。
  第一部:
  最初に,現実的な電離層電気伝導度モデルをいくらか簡略化して2次元球殻上での電離層電流の連続の方程式を数値的に解くことにより,グローパル極起源、電離導電流への電気伝導度赤道域増加の影響が見積もられる。赤道域で電気伝導度が増加することによる遮蔽効果で電場が弱められるものの,はっきりした昼間側電離層電流の赤道増加が見られる。計算された電離層電流プロファイルはSCのpreliminary impulse (PI )の観測された特性とほぼ良く合う。次に,極起源電離層電流系の数値シミュレーションの現実的な解を得るのに適する2次元電離層層状伝導度を導出するモデル化手法が開発される。そのモデルは伝統的な薄層伝導度モデルを修正することにより導出される。赤道付近における伝導度テンソルの非対角成分の一つで、あるΣoφ を修正することが非常に重要であることが示され
  る。その項は赤道における電離層電場のプロファイルに著しく影響する。提案されたモデルはSCの観測される電場・磁場の特長を良く再現する結果を出す。次に,新しいモデルが極起源電離層電流系に関わる3つの事項に応用される。はじめに,昼間の時間帯におけるDP2振幅の緯度プロファイルが, Region 2沿磁力線電流による電場キャンセル率を変えて調査される。Region2沿磁力線電流の総量がRegion1のそれの0.5倍を越えると赤道増加が見られなくなることが示される。二番目に,夏至における電離層伝導度条件で、両半球をカバーするグローパル電離層電流を計算することにより,磁場変化の南北非対称性が調査される。電流源として定電圧源が与えられたと
  きに高緯度における磁場と伝導度との聞に正の相関がはっきり見られることが示される。その関係は,電流源が定電流源であるとはっきりしないかむしろ逆の関係になる。最後に,太陽活動極大期および極小期における伝導度モデルによる結果を比較することにより,極起源電離層電流系の赤道での電場・磁場の太陽活動依存性が調べられる。結果はSCの赤道増加のLTプロファイルにおける太陽サイクル依存性の観測事実と良く合う。International Reference ionosphere (I R I) モデルに基づく新しいモデルは磁気圏一電離圏結合問題の定量的調査にさらに応用することが可能である。
  第二部:
  1957年から1992年におけるSCの現象報告を使用して柿岡で観測されたSCの極性について統計解析が行われる。地磁気東向き成分(D成分)が地磁気北向き成分(H) 下向き成分(Z) と同様にほとんどの場合で正であることが示される。地磁気双曲子座標系に変換された磁場データに基づく統計ではSCにおけるD成分極性の明確なシフトはなかった。この結果は, Araki (1977) によって与えられたSCの極起源、電離層電流系モデルと合う。しかしながら,女満別・柿岡・鹿屋の間の相関係数が,地磁気双曲子座標系への変換で常により高くなるわけではない。柿岡・鹿屋の女満別に対するH成分振幅比が午前の時間帯で異常な地方時変化をすることも示される。午前の時間帯におけるH成分の変化特性を明らかにするために,中低緯度における定常磁場観測を用いた重ね合わせ解析が行われる。午前から午後の早い時間帯の中低緯度観測点でSCのMIの開始直後にH成分に負のパルスが重畳することが見出される。事例解析及び数値解析を行った後で,この負のパルスがSCのMIを起こす極起源電離層電流系による磁場変化であることが示唆される。SCに関連するpreliminary positive impulse (PPI)が磁気圏圧縮による北向き磁場変化にこの負のパルスが重なることによって視覚化される見かけの変化であるという形態的解釈が提案される。高緯度電流源を夕方側に4時間ずらした数値計算で,1991年3月24日のSCの変化形について可能な解釈が与えられる。最後に,中低緯度における磁場D成分がSCに関連する磁気圏一電離圏結合過程を大まかに見積もるのに使える可能性が提案される。



[全文 (PDF; 英語; size:6252KB)]


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