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令和元年度調査研究のトピックス(3)

電磁気による火山活動評価の高度化に関する調査

研究代表者:島村 哲也

地磁気観測所では、火山活動の評価手法の研究の一環として、雌阿寒岳において全磁力観測を実施しています。

山体の比較的浅い部分で昇温が起こると地表付近では全磁力の変化が観測されます。この時、複数の観測点で得られた昇温前後の全磁力の差分から、地下の熱源の位置や規模をある程度推定することができますが、基礎データとして岩石磁気の情報が必要となります。しかしながら、雌阿寒岳では岩石磁気についてこれまで実測値が得られておらず、熱源解析の際には仮定値(1A/m)を用いてきました。そこで本調査では、現地で表層の岩石(転石)を採取し岩石磁気の実測値の取得を試みました。岩石の採取は、調査対象のポンマチネシリ(全磁力連続観測点:MEA、ME2、ME3)の3地点と、比較参照対象の阿寒富士(繰り返し観測点:No.13)の1地点において行いました(図1)。

図

図1 測定試料採取地点
   国土地理院の地理院地図を加工した。


岩石磁気の測定結果から、ポンマチネシリの試料は、ばらつきはあるものの常温では0.7〜10A/mの範囲に収まり、その多く(9試料中5試料)が0.7〜1.5A/mを示しました(図2の25℃の値)。また、試料を目的温度まで段階的に昇温させて測定した結果は、200℃より高温で岩石磁気の低下(熱消磁)が始まり、600℃ではほぼ0A/mになることが確認できました。なお、試料を全岩化学組成分析で確認したところ、ポンマチネシリの試料全てと阿寒富士の1試料は安山岩質、阿寒富士の2試料(常温の岩石磁気が15A/mより大きかったもの)は玄武岩質でした。

図

図2 雌阿寒岳の熱岩石磁気曲線
   T:試料を昇温させた温度、Jr:岩石磁気、下図:上図のJrを拡大して表示したもの。
   試料を磁気シールド内で目的温度毎に昇温・冷却後、岩石磁気を測定した。


岩石磁気の測定に際しては、産業技術総合研究所地質調査総合センターの機器を利用させていただきました。なお、成果は日本火山学会2019年度秋季大会で報告しています。


研究成果の発表:
 島村 哲也, 松本 恵子, 下司 信夫, 小田 啓邦, 雌阿寒岳における岩石磁気の調査, 日本火山学会講演予稿集, 2019, 2019 巻, セッションID P004, p. 114, 公開日 2020/04/13, Online ISSN 2189-7190, Print ISSN 2433-5320, https://doi.org/10.18940/vsj.2019.0_114, https://www.jstage.jst.go.jp/article/vsj/2019/0/2019_114/_article/-char/ja

他機関との共同研究:
 産業技術総合研究所




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